ちょっとした遺伝子の変異でどうして重篤な疾病を引き起こすのでしょうか︎
「07:遺伝子疾患ってなんだ?1 遺伝子の変異とは」で、「単一遺伝子疾患」について説明しました。
その遺伝子の変異はたいてい塩基が1つ間違っただけです。大したことはないような気がします。
遺伝子は日々変異を起こしています。
重篤な障害を起こす変異であれば淘汰されますし、変異自体が有益な結果をもたらすこともあります。いずれ、進化とウイルスをテーマに書いてみますね。
遺伝子疾患で発見されている1塩基のエラーは、ある意味子孫を残せるレベルの障害と言えないこともないかもしれません(当事者になればそんなことは言ってられないのですが)。
さて、たった1つのエラーがどんな影響を及ぼすのでしょうか。
1塩基のエラーが及ぼす影響
遺伝子からタンパク質の翻訳については「04:「遺伝子」って何だ?2」の解説を参考にしていください。
1塩基のズレが起こる場合
塩基の欠失(deletion)や塩基の挿入(insertion)は遺伝子からタンパク質の翻訳がずれてしまいます。
ぐちゃぐちゃですわ…
では、置換の場合はどうなのでしょうか?
1塩基が置換された場合
たまたま、終始コドンに置き換わってしまうとそこでタンパク質の生成が終わってしまいます。
1個のアミノ酸が置き換わる場合はどうなのでしょうか。
ここでの例は短いのですが、通常タンパク質は非常に長いアミノ酸の繋がりです。
1個のアミノ酸の置換は、大したことがないような気もします。
1アミノ酸の置換によるタンパク質の高次構造への影響
アミノ酸の配列でタンパク質の高次構造が決まります。
このためアミノ酸が置き換わると正しい高次構造を取れなくなります。
例えば(あくまで例えばの例ですよ)SSS1(正体だからタンパク質ですよ)の赤丸の部分が別のアミノ酸に置き換わったとします。
置換された部分の2次構造に変な歪みが生じます。
高次構造の変化で何が起きるか
何度も書きますが例えばの例です。
もともとSSS1は2つのサブユニットが合体して(4次構造)初めてタンパク質として働くとします。
重なりが分かりにくいので、gifアニメにしておきますね。
SSS1の4次構造を横から見てみますね。
本来であれば2つのサブユニット隙間にストレス物質を挟み込んで分解する酵素として働きます。
アミノ酸の置換による歪みによってもうストレス物質を挟み込めず分解できなくなります。
こうなるとこの変異を起こしたさちよんはストレス物質に弱い個体になってしまいます。
それがどの程度健康に影響するか分かりませんが、SSS1がとても大切な役割を果たすタンパク質であれば変異を起こしたさちよんは死んでしまうかもしれません。
変異の記述方法の確認
例えばこの変異が40番目のアミノ酸がGlu(E)がLys(K)に置き換わっているとします。
SSS1(p.E40K)などと記述します(違う記述方法もあります)。
SSS1(c.118G>A)(遺伝子レベルの記述)
SSS1(p.E40K)(タンパク質レベルの記述)
ここではは同じ変異を表しています。