キメラってなんだ？その対処法は？
まずもってキメラとは
いつもお世話になります。ウィキペディアで「キメラ」を見てみましょう。
『生物学における キメラ (chimera) とは、同一の個体内に異なる遺伝情報を持つ細胞が混じっている状態や、そのような状態の個体のこと。嵌合体（かんごうたい）ともいい、平たく言うと「異質同体」である。
この語は、ギリシア神話に登場する生物「キマイラ」に由来する。近年は「キメラ分子」「キメラ型タンパク質」のように「寄り合い所帯」「由来が異なる複数の部分から構成されている」という意味で使われる例もある。』
おお！今回は分かりやすい。
「ある1個体が2個体以上の遺伝子情報を持つ」ことをキメラと呼びます。
具体的なキメラの例
実験的にキメラを作ることもできますが、自然界におけるキメラの例を見てみましょう。
ヒトの場合、双子はお母さんお腹の中にいる時に細胞の交換が行われることがあります。
もしくは1人が1人に吸収されることがあります。「ブラックジャックのピノ子」が有名ですね。
例えば「黄さちよん」は体の一部に「青さちよん」の細胞を持つとします。
この「黄さちよん」1人でありながら2人分の遺伝子情報を持つことになります。
ヒトの場合は、二卵性双生児に限ります（三つ子以上の多卵生も含みます）。
一卵性の双生児の場合は細胞が交換されても同一の遺伝子情報を持つ細胞なのでキメラにはなりません。
ちなみに鳥などは卵生です。
卵殻で区切られているので、キメラになる可能性はまずありません（卵でも二卵生の場合がありますが、無事に孵化する可能性自体が低いです）。
キメラと遺伝子疾患の発症
SSS1は粘膜細胞でのみ発現してその他の細胞（皮膚細胞を含む）では発現しない免疫を強くするタンパク質です（フィクションです）。
「黄さちよん」：健康体
「青さちよん」：遺伝性免疫不全
の個体だったとします。
「黄さちよん」の皮膚や心臓が「青さちよん」の細胞と入れ替わっていても、「黄さちよん」は健康上何の問題もありません。
粘膜が「青さちよん」の細胞と入れ替わっていると免疫不全を発症します。
粘膜の一部が「青さちよん」の時は入れ替わった場合はその部分だけが弱くなり、そこから感染症を起こすかもしれません。
キメラになる確率
正直、分かりません。ヒトでは稀です。
ウィキペディアによるとヒトの「二卵性双生児のペアの8%ほどは血液キメラである。」そうです。
二卵性双生児の確率が約1％なので、ヒトでは「血液キメラは約0.08％」ということになります。
血液以外の他の体の部分の細胞がキメラになる可能性はもっと低くなります。
さて、犬猫になるとどうでしょう？
彼らは基本多胎児です。
それも双子ではなくたくさんの兄弟と一緒に子宮に入っています。
確率はヒトより高くなります。たぶん。でも確率は分かりません。
キメラと遺伝子検査
遺伝子検査する際、検査の試料（血液や細胞）を採取します。
キメラであれば採取する場所によって、本体の遺伝子情報ではなくキメラ部分を採取してしまう可能性があります。
本来は、遺伝子疾患に関わる臓器の細胞を採取することが正確な検査につながります（それが個体のメインの細胞とは限りません）。
しかし、口内粘膜や毛根、血液による検査の方が簡単です。
検査試料細胞がキメラ細胞だった場合、その意味がないのでしょうか？
その個体の遺伝疾患の発症の有無を調べるという意味では正確性に欠けるかもしれませんが
・メインの遺伝子情報検査をしている確率が高い
・統計調査
・近親の遺伝子疾患の可能性
という観点でも十分意味があります。
その個体が発症するか調べるためには複数の部分から試料を採取して検査することで精度が上がります。
正確性をどこまで考えるかは飼い主さんの判断になります。
ただ、愛玩動物として飼われている動物に関しては、キメラまで考慮する必要性は低いように思います。
繁殖のための遺伝子検査
繁殖する場合「その個体が発症するか」より「子孫に遺伝するか」が重要になります。
「体の全てが正常な遺伝子を持っているが、精母細胞（精子を作る細胞）のみが遺伝子変異を持っているキメラ」だった場合、本人は健康体であるにもかかわらず子孫に遺伝子変異をもたらします。
繁殖を考えるオスは精子による遺伝子疾患の検査を提案します。
メスの場合も卵子の検査が確実なのですが、検査のハードルが高いため通常の検査で代用となります。
愛玩と違い繁殖を考える場合は本当に！本当に！しっかり遺伝子疾患について考えていただきたいです。